「お客様の声が集まらない」ときの立て直し方——1件からでも効く見せ方
お願いしても感想が返ってこない。返ってきたのは1件だけで、とてもページにはできない。——「お客様の声」でつまずくのは、たいていこの段階です。
先に一つだけ。声が集まらないことは、そのまま「満足されていない」という意味ではありません。喜んでいるお客様ほど、わざわざそれを言葉にして送り返す機会がないだけ、ということがよくあります。この記事では、返ってこない原因の切り分け方、書く負担の減らし方、そして件数がゼロから数件のままでも信頼につながる見せ方を整理します。
なお、依頼のタイミングと依頼文そのものは集め方の記事にまとめてあります。ここでは「頼んだのに詰まっている」状態からの立て直しに絞ります。
返ってこない原因は、3か所のどこかで詰まっている
集まらない状態をひとくくりに「頼み方が悪い」と考えると、直しどころが見えません。詰まりは、だいたい次の3か所のどれかです。
- 相手の詰まり——誰に頼むかを選んでいない。案内を全員に一律で流していて、いちばん喜んでくれた人に個別で頼めていない
- タイミングの詰まり——取引が終わってしばらく経ってから頼んでいる。記憶が薄れると、書くこと自体が難しくなります
- 手間の詰まり——質問が多い、入力欄が長い、会員登録が要る、そもそも何を書けばいいかわからない
どこが詰まっているかは、数を粗く数えるだけで見当がつきます。「頼んだ人数」「開いてくれた人数」「返ってきた人数」の3つです。
母数が少ないうちは、全員に均一に頼むより、「この人は確実に満足していた」と言える数人に、個別のメッセージで頼むほうが返ってきます。目印になるのは、2回目以降のご利用があった方、お礼のメッセージをくださった方、他の方を紹介してくださった方です。
手間を減らす——「書いてもらう」から「答えてもらう」へ
いちばん多い詰まりが、この手間です。お客様は面倒がっているというより、白紙を前に「何を書けば正解なのか」がわからなくて止まっています。減らす方法は4つあります。
1. 質問を1つに絞る
3問聞きたい気持ちはいったん置いて、返ってこないうちは1問にします。1問なら、その場で返信できます。
・実際に使ってみて、思っていたのと違ったところはありますか。
・もし知り合いに紹介するとしたら、何と説明されますか。
2. 選択式にして、記述は1行だけにする
選ぶだけで終わる欄を先に置き、自由記述は最後に1行だけ添えてもらう形にすると、返信率が変わります。選択肢の内容そのものも、あとで紹介文に使えます。
ご満足いただけましたか: □とても満足 □満足 □ふつう □不満
ひとことあれば(1行で大丈夫です): ______
3. 「これくらいで大丈夫です」の見本を見せる
依頼に見本を1つ添えるだけで、長さと粒度の基準が伝わります。短い見本にしておくのがコツです。長い見本を見せると、それに合わせようとして手が止まります。
4. 返信するだけで済ませる
フォームを開く、ログインする、という段差が1つあるだけで人は離れます。件数が少ないうちは、専用フォームにこだわらず、メールやLINEにそのまま返信してもらう形で構いません。届いた文面をこちらで台帳に写せば済む話です。
口頭で聞いて、こちらで文章にする(代筆)
対面や電話が中心の商売なら、書いてもらうのを待つより、その場で聞いてしまうほうが確実です。手順はこうなります。
- 会計や引き渡しのときに、2〜3問だけ口頭で聞く
- 言葉づかいをできるだけ残したまま、こちらで短くまとめる
- まとめた文章を本人に見せて、掲載の可否を確認する
3番目が要です。ここを飛ばすと、それはお客様の声ではなく、こちらが書いた文章になってしまいます。確認は重くなくて構いません。
「(まとめた文章)」
この内容でホームページに掲載してもよろしいでしょうか。表現が違う、ここは削ってほしい、というところがあれば遠慮なくお知らせください。そのまま直します。
直しの申し出は歓迎してください。手を入れてもらった文章のほうが、本人の言葉に近づきます。掲載の同意の取り方そのものは、同意の取り方の記事にまとめています。
1件しかなくても、声は効く
件数が少ないと「まだ載せる段階ではない」と考えがちですが、逆です。読み手が探しているのは件数ではなく、自分と近い状況の人の話です。1件でも、近ければ届きます。大事なのは、少ない件数を隠したり水増ししたりせず、1件を深く見せることです。
- 抜粋せず、いただいた文章をそのまま載せる——短く切り詰めるほど、どこかで見たような一文になります。誤字の修正程度にとどめる
- 前後の文脈を、こちら側から1〜2行そえる——どんなご依頼で、何をして、いつのことか。声だけを浮かせない
- 写真や制作物と組にする——施工の前後、納品したもの、当日の様子。文章と現物が並ぶと、一気に具体的になります
- 件数を見出しに出さない——「お客様の声(2件)」ではなく「ご利用いただいた方の声」。数字は、数が武器になってから出せば十分です
そして、始めたばかりであることは、隠すより書いてしまったほうが印象が良くなります。
この一文があると、件数の少なさが「隠していない証拠」に変わります。数十件並んでいるのに全部が短い絶賛、というページより、1件でも具体的なほうが読まれます。
やってはいけない埋め合わせ
件数が足りないときに手が伸びやすいのが、次の4つです。どれも、短期的に見栄えを整えるかわりに、取り返しのつかない損をします。
- 自分で書いて、お客様の声として載せる——事業者が自分で書いたものを第三者の声に見せる行為は、広告表示のルールの上でも問題になります。やらないでください
- 利用していない知人に、お客様として書いてもらう——中身が善意でも、事実ではありません
- いただいた声を盛る、都合の悪い部分だけ削る——改変した時点で、それは本人の言葉ではなくなります
- 他所のレビューの文章を借りる——他人の書いたものです
実務的な話をすると、作り物の声は読み手にかなり気づかれます。文体が全部同じ、固有名詞がない、困りごとが書かれていない——このあたりは並べて読むとすぐ浮きます。そして一度「この店の声は作り物かもしれない」と思われると、本物の声まで疑われます。少ないまま正直に出すほうが、はるかに安全です。
なお、特典と引き換えに感想をお願いすること自体が禁じられているわけではありません。ただし、その事実を伏せたまま自然な感想のように見せるのは避けてください。書き方は載せ方の記事で触れています。
集まりはじめたら、次にやること
数件が10件、20件と増えてくると、悩みが「集まらない」から「どれを、どう並べるか」に変わります。そのときの一手は3つです。
- 依頼を業務の締めに固定する——思い出したときに頼むのをやめ、納品・お会計の手順の中に組み込む。ここが仕組みになると、件数は自然に積み上がります
- 悩み別・サービス別に分ける——読み手は全部は読みません。自分に近い1件にたどり着ける並びにする
- 日付を入れて、古い声を入れ替える——何年も前の声だけが並んだページは、かえって「今は動いていない店」に見えます
この段階になると、集める・選ぶ・貼るの往復が手作業ではきつくなってきます。
まとめ
- 返ってこない原因は「相手・タイミング・手間」のどこかにある。まず頼んだ人数を数える
- 母数が少ないうちは、確実に満足していた数人へ個別に頼む
- 質問は1問、選択式+1行、見本を添える、返信だけで済ませる——手間を削る
- 口頭で聞いて代筆してもよい。ただし本人に見せて確認を取る
- 1件でも、そのまま・文脈つき・写真と組で見せれば効く。件数は水増ししない
- 自作自演や知人の偽装は、本物の声まで疑われるので割に合わない
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